8/15(日)のおかえりはやぶさトークイベント・第二部のまとめ

去る8月15日、丸ノ内オアゾで行われた「はやぶさトークイベント」に運良く当選し、関係者の方のお話を聞く機会に恵まれました。聞きながらメモを取ったので、それを元に大まかに内容をまとめてみました。走り書きのメモをぼんやりした記憶力で補ってますので、抜けや細かな数字の違いなどあると思います。参考程度にご覧頂けると幸いです。
当日は撮影・録音などは禁止だったんですけど、メモを元にまとめた物を公開するのはいいのかな。もしまずい様ならご連絡下さい。

おかえりはやぶさトークイベント 8/15(日)
はやぶさが成し遂げた科学的・技術的成果と今後の展望を、プロジェクト関係者がご紹介します。
丸ノ内オアゾ 丸善・丸の内本店3F 日経セミナールーム
第二部
【日 時】 8月15日(日) 12:00〜13:00
【内 容】 その時、何を考えた?〜最後の運用室とカプセル回収最前線〜
7年間、苦楽を共にした「はやぶさ」に最後のコマンドを送った際の心境や想いを語る。一方、同じ時間、オーストラリアでカプセル帰還の瞬間を待ちわびていた回収班の心境を対比して、お互いの「はやぶさ」に対する想いを伝える。さらに、砂漠の真ん中で7年ぶりにカプセルと再開した瞬間に込み上げてきた感情を研究者自らのトークで伝える。

NECネッツエスアイ 社会インフラシステム事業部 宇宙フィールドサービス部 中村陽介さん

http://hayabusa.jaxa.jp/message/message_033.html
内之浦や臼田から、テレメータデータを受信したりコマンド指令を実行したりしてた方。
・まずプロフィール紹介。中村さん同様、NECネッツエスアイから運用支援に行っていた方のと二人分。その方の名前の横に「既婚」とあって「?」と思ったら、中村さんの名前の横には赤く目立つ様に「未婚」と書いてあった。会場爆笑。
はやぶさの打ち上げから帰還までを大まかに説明。
・最後、大体衛星の最後って言うのは停波するんだけど、はやぶさは停波していない。22:28:30、いつもの様に山の影に入って見えなくなった。だから、本当にこれで最後なのかな、という気がした。
・最後にはやぶさチームの方々から花束を頂いた。

JAXA はやぶさプロジェクトチーム 並木道義さん

http://hayabusa.jaxa.jp/message/message_010.html
カプセル落下の直下でビーコン受信していた方。
・ビーコン受信は4つの班に分かれてやった。楕円形の落下予測地域を囲む様に4カ所、パラキリア班、マウントビビアン班、キャトルボア班、マウントエバ班。パラキリア班以外はグレンダンボに宿泊してた。並木さんはマウントエバ班。各班3名に、軍用地なので軍関係者のエスコートが1名付く。
・ところがこのマウントエバ班、グレンダンボから一番遠かった。片道126km、途中からダートになって46km、往復250km余りを毎日行かされた。
・キャラバンカーの中に、受信機、ノートパソコン、衛星電話など。
・当日直前はわりと冷静だった。切り離し成功という知らせを聞いて、確信が持てた。よしこい! カプセル!
・4班の方探結果の交点にカプセル。ほとんど無風だったので驚異的な精度だった。

JAXA はやぶさプロジェクトチーム 山田哲哉さん

http://hayabusa.jaxa.jp/message/message_005.html
カプセルを作った方。
・カプセル回収の時の防護服で登場!おぉぉー!「重いので脱ぎます」「このヘルメットは7kgあります」「持ってみてください」この後会場を回して全員触らせてもらった。結構重いです。かぶってみてる人も居た。
・回収に際して、川口先生からは「普通が普通じゃないと思え」と言われた。木っ端微塵になって危ない物がそこら中に散乱してるとか、火工品がそのままとか。防護服もそれを踏まえて作った。でも実際には、何も起こらずにふつーうに回収できた。
・國中先生には「そんな危ない物誰も拾わねぇよ」「お前一人で行け」と言われた。
・会場のスライドに使っていたMacがフリーズ。司会のお姉さん「普通が普通じゃないってこういうことですね」などとフォロー。場の繋ぎに、昨晩1:00過ぎに丸の内に到着、設営に朝5:00までかかった、などという話を。
・スライド復活、回収の時の写真を見ながら。防護服を國中先生や安部先生に着させてもらっている所。全身を覆う白い防護服を着て、その上で紺色の防護服を着る。國中先生は「危なくないのが分かったら行きたそうにしてた」
放射能や宇宙細菌の危険も考慮しながらの回収。もしバラバラだったら、周囲100m焼き尽くした上で消毒、なんていう話もあった。なんとか消毒だけということにしてもらった。放射能も、全然鳴らなかったけどガイガーカウンターで検査した。
・スライドで、2003年内之浦でのカプセル組み立ての様子。その後、帰還後のカプセルの写真。ほとんどそのまんま。「今までの大変だった事が全部夢で、7年前の鹿児島からタイムマシンでここに来たんじゃないかと思うくらいそのままだった」
・パラシュートアンカーは着地した後、風に引っ張られたりしない様切り離される予定で、実際その通り作動した。風がなかったのでその場に残ってた。
・「あれ、なんで残ってんの?」と題されたスライド。背面ヒートシールドのカプトンテープの燃え残り、よく「痛々しい」と言われるが、あれは本来全部なくなるはずだった。前面ヒートシールドの方が全部燃えちゃっているので本当は痛々しい。背面ヒートシールドは、中途半端に厳しくなかったから残った。あの模様は、幅2.5cmのテープをびっしり貼って、担当の人が継ぎ目をローラーで押さえた後。いい仕事のあかし。
・スライド「カプセルチームの秘密」例のカードについて。カプセルチームの人達の名前が書いてある。「川口先生ごめんなさい」だそうです。
・パラメータの設定について。244秒(大気圏突入から?)、4分ちょっとの間にすべて(パラシュートの展開やビーコン発信など)が起こる。ビーコンが出たら探せるけど「出なかったらお前のせいだ」と。ビーコンが出るまで3分、目をつぶってカウントダウンを待った。5、4、3、2、1、……。+1秒でビーコン受信。長い長い1秒だった。ビーコンが出たので「僕の仕事は終わったな」。

この後、JAXA阪本成一先生も加わってクロストーク

・何かあったら中村さん、と言われていた。中村さんは今はジオテイル、ひのでの運用に携わってる。衛星はコマンド売っても返事がすぐ返ってくるのが、深宇宙と違う所。
・プロフィールに「未婚」とあった事に対してだと思いますが、「プライベートの時間が余り取れなかったんじゃないか。JAXAサイドとしても責任を感じる」と阪本先生が。会場大爆笑。
・並木さんは気球実験のプロ。科学観測を40年もやっている。日本の気球って言うのは、大体海に落として電波を探して回収する。並木さんは今までに上げたすべての気球を回収した。回収率100%。すごい!
はやぶさの回収で一番苦労したのは実はアンテナの組み立て。ロケット・衛星の人は組み立ては自分でやらないで、後ろで見てるだけ。後で検査するのが仕事。一度自分でゆるんだビスを締めようとしてメーカーの人に止められた事があった。並木さんご自身はいつもやっているけど、各班でアンテナ組み立てるのはけっこう大変だった。
・南極にも行ったし、DASH(高速再突入実験機)の実験ではモーリタニアでもアンテナ立てた。「電波さえ出れば探せます!」
・山田先生には、本当はすぐにカプセルの研究したいというのを、川口先生と阪本先生で説得して待ってもらっている。山田先生曰く、「再突入する時の環境っていうのは地上では出来ない。地上では10のうち7ぐらいしか分からないのが再突入の業界。」業界?
・山田先生はチャーター機が着いてから常にカプセルと一緒、10m横には山田先生が居る状態。6点+1人で展示物みたいな感じ。


このあたりで時間切れになりました。とにかく皆さんお話が面白い! 内容もさることながら話にちゃんとオチがあって、やっぱり頭いい人は話しも面白いなぁ、ていうか、プレゼン能力がないと予算ぶんどってきたりもできないんだろうなぁ、などと思いました。
夏休みと言う事もあって、各地の博物館や天文台で様々なイベントが行われています。最前線にいる科学者の話を、直に聞けるチャンスです。皆さんも是非、お近くのイベントに足を運んでみてください。